みなさんは「しゃくり」と言う言葉を耳にしたことがありますか?
最近では、カラオケの精密採点(DAM)などでよく使われていますね。
言葉はよく聞くのですが、、一体何のことだか分からない?と言う方のために、今回は「しゃくりの意味」について、歌音源や譜面を交えながら具体的に説明して行きたいと思います。
1. 「しゃくり」とは何か?
まず、しゃくりとは何なのか?
これは、ここ数十年で言われるようになった新しい音楽用語で、歌のテクニックに付けられた名前です。
この言葉は、日本のポピュラー音楽で言われる用語ですので、いわゆるクラッシックなどの音楽用語ではありません。日本の音楽業界用語と言っても良いかもしれません。
歌には、必ず「節」と言うものが付いています。
「節」と聞くと演歌や民謡などを連想してしまいますが、節は演歌だけではなく幅広くポップスやラップ、ソウル、レゲエ、Jazz、Rockなど様々なジャンル、ほとんどの歌に付いています。
例えば、みなさんが想像しやすい演歌の「こぶし」なども節のひとつと言えます。
ソウル系のシンガーもよく節を回しますが、例えばスティービー・ワンダーなどは彼特有の解釈でメロディーに節をつけて歌いますよね。
同じく「しゃくり」もそう言った節のひとつなのです。
節はボーカリストの個性になると言う記事が過去にもありますので、そちらも参考にしてください。
2. 「しゃくり」とは、どんなテクニックか?
では、具体的にはどんなものを「しゃくり」というのか?説明します。
- 「しゃくり」のテクニックを具体的に言うと
- 音程を下から上にズリ上げる歌唱法です。音程を下から上にしゃくり上げるので「しゃくり」と言われます。
単純明快ですね。
他の音楽用語では「ポルタメント」「グリッサンド」「ベンドアップ」、ギターの奏法では「スライド奏法」「チョーキング」と言うのがありますが、それとよく似ています。
3. 【しゃくり」のない歌】と【しゃくりを入れた歌】の聴き比べ
では、ここで童謡「故郷(ふるさと)」を使って実際にしゃくりがどういうものか?音源を聴いてみましょう。
A「しゃくり」のないストレートな歌 「故郷」
B「しゃくり」を入れた歌 「故郷」
- ● しゃくりのない【A】の歌
- 譜面にある音符通りのメロディ。とてもストレートな歌です。
よく言えば、飾り気がなく純粋なイメージ。
- ● しゃくりを入れた【B】の歌
- これは、譜面のメロディを少しくずして歌っています。童謡なのですが、ちょっと今風の歌にも聴こえますね
しゃくりのないAの音程ライン
まず、グリーンがAの音程ラインです。ストレートに、音符の位置通りに音程が上下していますね。
しゃくりを入れたBの音程ライン
赤で示したのが、シャクリを入れたBの音程ラインです。パッと見、何処が違うのかあまりわかりませんが、例えば最初の音の出だし部分など、Aのラインとは違っていますね。
AとBの音程ラインを比べてみる
では、2つを重ねてみましょう。丸く囲った部分がシャクリ部分です。
どうでしょうか?Bの赤い音程のラインは、音符の位置より少しズレて上に上がっているのが分かると思います。
本来のメロディより少し遅れて音を下からしゃくり上げています。コレが「しゃくり」の正体なのです。
しゃくりはボーカリストの個性になる
- 歌に「しゃくり」を入れると
- 歌に表情が出てきます。歌の表情は、その人それぞれの表現の幅であり、個性です。「しゃくり」を上手に取り入れる事で、同じ歌でも聴こえ方が全く変わってきます。
このように、歌には節と言うものがあり、その中でも「しゃくり」はとてもよく使われるテクニックです。
ポップスソングの中には、必ずといって良いほど入っているテクニックですので、皆さんも知らず知らずのうちに聴いているハズです。
アナタが歌う時にも、自然にしゃくりが入っていることも多いと思います。でも、、それが「しゃくり」だと言う事に気づいている人は少ないのです。
当校でもこのレクチャーを聞いて、目からウロコが落ちる生徒が大勢おります。知ってそうで意外と知らない節の知識なんですね。
さて、「しゃくり」が何か理解できたら、自分のお気に入り曲にしゃくりを探してみてください。どんな場所に入っているのか、よくよく聞いて研究してみてくださいね。
必ず、アナタの実になります。
次回も「しゃくり」の秘密(しゃくりを使った歌の表情の付け方や注意点など)について、さらに深く踏み込んで書いてみたいと思います。どうぞお楽しみに。