MIDIトラックのリアルタイム入力(実際に弾いて入力する事)には、生演奏ならではの微妙なタイミングのズレを表現できるという魅力があります。
しかし、ベースやドラム等のリズム楽器では、タイミングのズレが原因でリズムが乱れて聞こえてしまうこともあります。
今日は、それらのMIDIデータのニュアンスを消すことなく自然な仕上がりにするための、Pro Tools上でのクオンタイズの設定方法を説明したく思います。
録音したデータのタイミングを補正する機能です。
まずはクオンタイズの基本的なかけ方から説明していきます。
クオンタイズをかける範囲の指定方法
まずはクオンタイズをかける範囲を指定します。
リージョン全体にかけたい時
編集ウィンドウの左側のトラックネームの下にあるプルダウンメニューからリージョンを選びます。
MIDIデータが表示される画面上でクオンタイズをかけたいリージョンを選択します。
特定のノートにのみクオンタイズをかけたい時
同じく編集ウィンドウの左側のトラックネームの下にあるプルダウンメニューからノートを選びます。
クオンタイズしたいノートをマウスで囲んで選択します。
※選択されたノートは色が白く変わります。
クオンタイズを表示させる
範囲が指定できたら、イベントメニューのイベント操作から[クオンタイズ…]を選び、クオンタイズ設定画面を表示させます。
クオンタイズの対象とグリッド(最小音符)を設定する
一番上の【クオンタイズの対象】カテゴリーで、クオンタイズがかかる対象をチェックで選ぶことができます。
クオンタオズ設定画面
- ノートオン ⇒ ノートの頭がクオンタイズされます。
- ノートオフ ⇒ ノートのお尻がクオンタイズされます。
- ノートのデュレーションを維持 ⇒ ノートの頭はクオンタイズされますが、ノートの長さは入力時の値が生かされます。
※デュレーションとはノートオンからノートオフのまでの長さのことです。
クオンタイズの細かさの設定
中段の【クオンタイズグリッド】カテゴリーで音符単位で設定します。通常は入力するフレーズの音符の最小単位に設定します。
また、その下の幾つかのカテゴリーにチェックを入れる事で以下のことが出来ます。
- 連符指定 ⇒ 3連符などの連符の指定する。
- グリッドのオフセット ⇒ クオンタイズで揃える位置を前後に微調整する。 ※ストリングスなど立ち上がりの遅い楽器をテンポよく聴かせたい時に使用
- ランダマイズ ⇒ クオンタイズしたノートの位置をランダムにずらす。
クオンタイズのオプション設定
ウィンドウ下段の【オプション】を設定すれば、さらに細かいクオンタイズの動作を指定できます。
クオンタイズのオプション
それぞれのカテゴリーにチェックを入れる事により以下の効果を得られます。
スウィング
値が0%の時は表と裏のリズムの長さがイーブン(1:1)になり、通常のクオンタイズと同じ状態です。100%の時は3連中ヌキのリズム(2:1)になります。
ジャズや典型的なスウィングのリズムを作りたい場合は細かさを8分音符に設定し、50〜80%程度に設定します。
<指定範囲内のみ適用
指定したグリッドからどれくらい離れたノートをクオンタイズするか指定します。
クオンタイズする時にこれを50%にするとグリッド間の距離の±25%の範囲にあるノートのみがクオンタイズされます。
※70%は±35%の範囲、80%では±40%の範囲がクオンタイズされるという計算になります。)
指定範囲内を除外
上の[指定範囲内のみ適用]とは逆で、50%に設定するとグリッド間の距離の±25%の範囲にノートがある場合はクオンタイズの対象から外されます。
ピアノでコードを「ジャララーン」とわざとずらして演奏することがありますが、そのニュアンスを残したい時などに便利です。
※こちらも上記と同様に70%は±35%の範囲、80%では±40%の範囲がクオンタイズの対象から外される計算になります。)
強さ
指定したグリッドにどれだけ強く引き寄せるかを指定します。
通常のクオンタイズはノートががっちりグリッドに合う(100%)ものなのですが、例えば50%に指定するとグリッドからずれているノートとグリッドのズレが50%(半分)に修正されます。
具体的には、例えば20msec ずれているノートが半分の10msecのずれに修正されます。
以上の説明のようにクオンタイズと言っても様々な細かい設定があります。
これらの細かな設置を理解して上手く使用する事で、リアルタイム入力で得たグルーブ感を無くすことなく自然なクオンタイズをかける事ができます。是非覚えてみて下さい。