【小さい声で弱く歌う時も、しっかり口を開けて声を前に出していますか?】でも書いた通り、歌はしっかりと声を前に出すことがとても大切です。
しかしボーカルブースという個室に入っていると、声を前に出すということが心理的に出来なくなってしまうことがあるんですね。
周囲の雑音も全く聞こえない、防音された狭い空間に一人で入る訳ですから。
また【ヘッドホンをして歌を録音すると自分の声量が分からなくなる】で述べたように、ヘッドホンをしてレコーディングすると、自分の声を直接耳で聞くことが出来ないので、自分がどれくらいの声量で歌っているかは把握しずらく、慣れていないと思いのほか難しいものなんですね。
とかくボーカルレコーディングはその環境からこじんまりしやすい。
その様な環境で歌うことになるので
- 口をしっかり開けずにモソモソ歌ってしまう。
- 声をしっかり前に出せない。
- 言葉を飲み込むように歌ってしまう。
- 窮屈な歌になってしまう。
- 小さく弱い声で歌ってしまう。
- 声がふらついて安定感がなくなる。
など、ダイナミックさに欠けた歌になりがちです。
レコーディング環境からくる心理的な閉塞感が歌に悪影響を及ぼすことは珍しいことではありません。
これでは歌にとって最も大切な【人(リスナー)に伝える】ということが出来なくなってしまいます。
ボーカリストの精神状態が歌を左右する
閉塞感は何もレコーディング環境だけから生じるだけではなく、『上手く歌わなければならない』『ちゃんと歌えるか不安』など、ボーカリストの精神状態によっても歌は大きく左右されます。
【コンデンサーマイクのタブーな使い方 !?】では≪ボーカリストのテンションやフィーリングを重視し、躍動感のある歌を録音する≫ために、コンデンサーマイクを手に持ってレコーディングしたことを紹介しました。
どうしてこういうことをしたかと申しますと、そのアーティストは大事なシングル曲を『どうでしても上手く歌わなければならない』というプレッシャーからメンタル的に自分で自分を追いつめていたからです。
オープンな気持ちで歌に集中する
先日、歌う環境によって『こんなにも歌が違ってきてしまうんだなー』と実感したことがありました。
それは一般の方からの音源制作依頼があって、ボーカルレコーディングをしていた時のことです。この方はブースに入ってヘッドホンをしながら本格的に歌をレコーディングするのがほとんど初めてという方だったんですね。
緊張感もあったのでしょうが、声がマイクにのらず(しっかり声を出すことが上手く出来ず)、こじんまりした歌になっていました。
試しにこの方に、ボーカルブースから出てもらって、ヘッドホンもせずにスピーカから聞こえてくるオケを聴きながらハンドマイクで歌ってもらったところ、見違えるように歌が良くなったんですね。
つまりカラオケボックスで歌っているのと同じ状態です。
広い空間で、直接自分の歌が聞こえる状態で歌ったことで精神的にもオープンになったのでしょう。しっかりと声が出てきて、発声が安定したことで音程や節回し、ニュアンスまで様変わりして素晴らしく良い歌になったのです。
この様に
歌というのはその環境や精神状態によって良くも悪くもなっていきます。
オープンな気持ちで、歌に集中し、声をしっかり出すことが良い歌につながっていきます。
皆さんも自宅で歌を録音する際に、自分の本領が発揮できていないのでは?と感じた時は、いろいろと歌いやすいように工夫してみてください。